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2014.03.11 Tuesday

KAMOSHIMONO Vol.3 生命のデザイナー ウイルス2

このシリーズのタイトル「KAMOSHIMONO」の語源である「醸す」とは辞書で引くと次の通りです。

【醸す】

麴 (こうじ)に水を加えて,酒や醬油などをつくる。醸造する。 
△修両譴法い△詈薫狼い箴態を出現させる。 
ある物事,事態を作り出してゆく。もたらす。 

三省堂 大辞林より

僕は「生命」とは
”ついつい何かしらを醸し出す、何かしらを産み出してしまう力”
を指すのではないかと思うのです。

さて、前回に続いてウイルス編ですが、呼吸も代謝も行わないウイルス達は、いったい何を醸しているのでしょう。
ウイルスがどこからやって来るのか、という事についてこんな説があります。
 

ウイルスは宇宙空間からやって来る。
細胞を持たず呼吸も新陳代謝も必要ないウイルスは、
真空の宇宙空間でも存在可能であり、事実、大気圏外でも見つかっている。

毎年少しずつ形態の違うインフルエンザが流行するのは、
大気圏外の強い宇宙線を浴びて変異したインフルエンザが、
太陽風と共に天から降りて来るのからである。
 

真偽の程はともかく、そんな説も飛び出しちゃうくらい意味不明なウイルスって、すごく面白い存在だと思うのです。

そんな宇宙生物?ウイルスは、我々ヒトゲノムの中に住み着いている。ということを僕が知ったのは、つい最近の事でした。

その前に、まずウイルスの増え方のおさらい。

自分で増殖する仕組みを持たないウイルスは、図1の様にほかの細胞を利用して増えます。(「ウイルスと地球生命 岩波書店」を参考に作成)

  • 細胞に取り付いたウイルスは、遺伝子を細胞内に注入(1)
  • 注入されたウイルス遺伝子は、細胞内のパーツを子ウイルスの材料に利用して組立て(2)
  • 子ウイルスを大量生産して細胞から飛び出していく(3)
  • おかげで感染した細胞はぼろぼろになる。ウイルスが病原体である所以です。

以上、中学生物で教わるウイルスの増え方でした。

ところが、侵入したウイルス遺伝子が、元の細胞の遺伝子と融合して、そのまま住み着くものがあります。
しかも生物の親から子へ、世代を超えて引き継がれて行く場合さえあります。(ウイルス化石と呼ばれたりしています)

前回ウイルスの働きの例として取り上げた、妊婦の胎盤で活躍するウイルスも、こうした遺伝子の中に住み着いているウイルスの働きによるものです。

さらに驚くことは、こうしたゲノム(遺伝子全体)に含まれるウイルス由来の遺伝子の占める割合です。
 

ヒトゲノムの割合
「パンデミックから共存へ YOMIURI ONLINE」を参考に作成


ヒトゲノムの内、なんとヒト機能遺伝子はたった1.5%であり、現在分かっているだけでもほぼ半分はウイルス由来なのです。

これを見て、単に”ゲノムの中にウイルスが共生している〜”なんて説明されても、無理があると思うのは僕だけでしょうか?

だって、オリジナルは1.5%で残りが共生?それって変じゃない?

人は自分のものは自分のもの、自分の遺伝子も自分のもの、という目で見てしまいがちです。

そしてウイルスは外から侵入して来る病原体であり、他者と捉えてしまいがちです。

でも、ここは思い切って遺伝子というものはそもそもウイルス由来である、と捉えてみてはどうでしょう。
 

そのシナリオはこんな感じ。

かつて宇宙かどこかで産まれたウイルス君が、より居心地の良い場所を求めて原始の地球に発生した有機物の泡に潜り込んだ(=細胞の誕生)。

ウイルスの細胞への侵入の試みはその後も延々と続き、あるものは元の遺伝子と融合し、あるものは淘汰され、様々なバリエーションの生命デザインを生み出すきっかけとなった。

そのバリエーションの一つが”ヒト”という生物の形態をとりあえずとっている…。


ウイルスは、未だ生物か非生物かもはっきりしない、宇宙からやって来たかもしれない得体の知れない物ですが、

そんなものが私たちの細胞の核に住み着いているどころか、大半を占めているというのはどうやら事実です。

私たちの遺伝子がウイルスそのものだとすれば、この体はウイルス達の醸しもの・・・

そう、私たちこそ宇宙生物ウイルスの子供達そのものです。

どうです?
何だか、
なんでも出来そうな気が湧いてきませんか?


小さな世界を探求することと、空を見上げることは、同じ宇宙を覗くことかもしれません。

さて、次回からはようやく細胞を持つ微生物の話に進みたいと思います。

tOmOkicHi

2014.03.01 Saturday

KAMOSHIMONO Vol.2 生命のデザイナー ウイルス1

 さて、微生物を眺めながら世界観を見直してみようという試み、トップバッターは地球上でもっとも小さな生物、ウイルスから始めようと思います。
もっとも、ウイルスは生物なのか非生物なのか、という問いは科学者の間でも意見が分かれているそうですが、僕は科学者ではないので、こいつは生物だと決めてかかりますw。
宇宙生物ではないかとさえ思っています。
ちなみにどうしてウイルスは生物ではない、という意見があるかというと、

・細胞の構造を持っていない(遺伝子をタンパク質の殻が包んでいるだけ)
・呼吸もエネルギー代謝も行わない
・細胞分裂も生殖活動もしない(増殖する時は他の細胞の能力を利用する)

てな具合に生物の基本原則に乗っ取っていない感じだからです。
そう言われると、確かに生物らしさを感じられないですが、しかしこのウイルス、実はすべての生物にとって、あるいは地球の環境にとってさえ、とてつもなく大きな役割を果たしているらしいことが次々と分かって来ています。

 ところで、ウイルスと言ってまず思い浮かべるのが、風邪やインフルエンザなどなど、厄介な病原体というイメージだと思います。
インフルエンザウイルスは、毎年微妙にその形(=デザイン)を変えて現れる為に、人体の方は一度免疫ができても翌年にはまた新たな免疫を作り直す必要に迫られる。
インフルエンザはデザインを変えて流行をつくる

毎年異なるデザインで流行をつくるなんて、デザイナー真っ青ですね。
もっとも、ファッションの大流行はもてはやされても、インフルエンザのそれは歓迎されませんが。

そんなウイルスのデザイナーとしての働きは、ウイルス自身の話にとどまりません。

 次の写真は「エリシア・クロロティカ」という北米の海に住む貝殻の無い貝”ウミウシ”の仲間です。
貝ですから、もちろん動物です。しかしこの緑色の貝は、植物の様に体の中の葉緑体によって光合成でエネルギーを得るので、餌をとらずに生活することが出来ます。
Photo By EOL Learning and Education Group
実はこの葉緑体は、もともとウミウシが餌として食べた藻類から体に取り込んだものです。
ですが、ふつう餌として食べたものは、消化され栄養となって体に取り込まれますよね。
仮に葉緑体を消化せずに体に取り込めたとしても、その機能をそのまま利用してエネルギーを得る、なんてことは出来ないはずです。
そこで登場するのがウイルス。
このウミウシの遺伝子は、ある種のウイルスに感染した状態になっていて、このウイルスの働きで植物の遺伝子の一部がウミウシの遺伝子に取り込まれます。すると葉緑体はまるで植物の中にあった時と同じ様に働くのだそうです。
つまり遺伝子操作です。
このように、ウイルスは他の生物の遺伝子を作り替え進化させる働きがあります。

そんなウイルスのデザイン力は、我々ヒトにも作用しています。
たとえば、母体が胎児という異物を宿しても拒絶反応を起こさないのは、人の遺伝子に宿っている特定のウイルスが胎盤で働いて、母体の免疫機能が侵入できない障壁を作っているのだそうです。
つまりヒト(おそらく妊娠するすべてのほ乳類)は、その昔こうしたウイルスに感染することで妊娠という特技を獲得した、ということらしいです。

これも、ウイルスというデザイナーの力(神業と言ってもいいかもしれません)のほんの一例です。

先ほどヒトの遺伝子の中にウイルスが宿っている、と書きましたが、
次回はこのあたりからもう少し広げてみたいと思います。
─ tOmOkicHi



参考資料:ウイルスと地球生命 岩波書店


 
2014.02.26 Wednesday

KAMOSHIMONO Vol.1 プロローグ

こんにちは、tOmOkicHiです。

AWAYAはこの秋、滋賀県近江八幡市で開催されるアートの祭典「BIWAKO BIENNALE」に出展させて頂くのですが、今回の展示会場というのが江戸時代から近年まで操業されていた大きな酒造工場跡なのでした。

ご存知の通り日本酒は麹で米を発酵して作られますが、古く使い込まれた酒蔵には”蔵付き菌”と呼ばれる、酒蔵自体に麹菌が住み着いた状態になっているのだとか。

下見に訪れた会場は、まさにこの”蔵付き菌”が未だにウヨウヨしていそうな雰囲気というか、香りというか、臭気というか、”何者かの気配”に満ちあふれていて、それだけで何だかワクワクw、彼らが醸し出す生成物のように、ふつふつと作品が生まれそうな予感の今日このこの頃です。

 そんなこともあって、これから何回か微生物にフォーカスした話題をこのブログに公開していこうと思います。

 ところで、日本酒に限らず味噌に醤油に味醂に漬け物に納豆...日本の食材には麹や酵母、乳酸菌等の微生物の力を借りた発酵食品がたくさんあります。

手前味噌ですが、ウチも我があわ田んぼで穫れた米や大豆を使って毎年味噌を作っています(もっぱらyUさんのお手柄ですがw)、実際に作って食べて感じる事は、味噌は単なる調味料ではない、生きた食べ物なんだということ。

「どうぞうまく発酵のほどヨロシクお願いします」とばかりにあの手この手でお世話させて頂く様は、まさに生き物を育てるのに等しい。

こうして出来あがった味噌は、正真正銘生きた味、いや生命そのものだ。

方や、今スーパーやコンビニで手に入るものは、殆どが念入りに精製され薬漬けにされた原料を使い、加熱して滅菌されされたあげくに真空パックにされ、もはや生き物の亡がらのような物に思える。この両者、違うのは味だけだろうか?


 そんなことを考えると、生きているとはどういう状態なのだろう?そもそも生命って何なんだろう?なんてことに興味が広がってきます。

味噌などを発酵する麹菌や乳酸菌のように、目に見えない程小さな生物は微生物と呼ばれています。

微生物。
確かに彼らは小さいが、それは我々人間の大きさを基準にした場合のこと。

我々人間も細胞という小さな生命の集合体であり、私がいま”私”と思っているのは、そんなたくさんの小さな生き物達の集合意識のようなもの、なのかもしれない。

貼付けた動画は、宇宙ステーションから観た夜の地球の様子です。

母なる地球を一つの生命体としてとらえてみれば、我々人間なんて本当に小さな微生物のような存在なんでしょうね。

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